個別受注生産とは?意味や他の生産方法との違い。進めていく上での課題と改善策

個別受注生産とは、顧客からの注文を受けてから製品の仕様を設計・製造する生産方式です。
英語では「Engineer to Order(ETO)」と呼ばれます。
製品ごとに異なる仕様や工程が求められる個別受注生産は、高付加価値製品や多品種少量生産に適している一方で、管理の煩雑さや納期のリスクといった課題も抱えています。
導入を検討する際は、他の生産方式との違いや、運用における注意点を正しく理解しておくことが重要です。
この記事でわかること(3行サマリー)
- 個別受注生産は受注ごとに設計した仕様に基づき製造を行う生産方式で、高付加価値製品や多品種少量生産に適している
- 仕様変更の多さによる管理の煩雑化や納期の遅延リスク、原価把握の難しさといった課題も生じやすい
- 標準化・見える化・情報の一元管理を軸に管理体制を整えることで、QCDの最適化は十分に可能

第3システムソリューション部
矢吹 圭介
2011年入社、ProAxisの保守サポート担当。製造業の業務に対する造詣が深く、顧客ニーズを様々な視点から拾い上げ実現することで、製品力の強化に大きな貢献をしている。日々、システムを安心してご利用いただけるようサポート。迅速かつ丁寧な対応を心がけ、安定したシステムの稼働を維持できるよう努めるとともに、トラブル発生時には原因を的確に特定し、最短での解決を全力で行っている。
個別受注生産とは
個別受注生産とは、受注ごとに設計した仕様に基づき製造を行う生産方式を指します。
受注生産の生産式の一つ
個別受注生産は、受注生産(BTO:Built to Order)の生産方式の一つです。
受注生産とは、顧客からの発注後に製造を開始する生産形態を指し、主に「個別受注生産」と「繰返受注生産」に分けられます。
前もって決まっている仕様を受注のたびに製造していく生産方式
両者の大きな違いは、受注ごとに開発・設計を行うかどうかにあります。
- 個別受注生産:受注ごとに設計した仕様で製造を行う
- 繰返受注生産:前もって決まっている仕様を受注のたびに製造する
個別受注生産では、顧客ニーズに合わせて仕様を設計をします。一方、繰返受注生産では一度設計した仕様を繰り返して使うため、受注ごとの開発・設計を伴わない場合があります。
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個別受注生産と見込み生産との違い
需要予測に基づきあらかじめ製品を製造しておく方法
受注生産と対になる生産形態で、大量生産に向いている
見込み生産が在庫からすぐに納品できる点が特徴である一方、個別受注生産は多品種少量生産に向いており、納品までに時間がかかります。
個別受注生産と見込み生産の特徴の違いは、以下のとおりです。
個別受注生産の例
個別受注生産で製造される製品の例は、以下が挙げられます。
- 産業用機械
- 生産設備
- 試作品
- エンジンや船、注文住宅
- 専用デザインの製品
- オーダーメイドの製品
個別受注生産は、「少量生産」「カスタマイズ性を重視する製品」などに適しています。
個別受注生産による2つのメリット
個別受注生産により製品の製造を行うことで、「顧客のニーズを満たせる」「抱える在庫が少ない」というメリットが期待できます。
顧客のニーズを満たせる
個別受注生産では、顧客からの発注ごとに、要望や希望に合わせた仕様を設計します。設計後も、途中で仕様を変更したり、トライアンドエラーを重ねたりしながら、顧客ニーズを細部まで反映した製品づくりが可能です。
その結果、顧客満足度の高いものづくりにつながります。
抱える在庫が少ない
個別受注生産では、必要なタイミングで必要な数だけ製造するため、原材料や部品も製造に合わせて手配できます。その結果、余分な在庫を抱えずに済む点がメリットです。
大量在庫を抱える見込み生産では、売れ残ってしまった製品が余剰在庫につながる恐れがあります。一方、個別受注生産では受注した分だけ製造するため、余分に製品を作る必要がありません。
個別受注生産の課題
個別受注生産にはメリットがある一方、個別受注生産には現場負荷が高まりやすいという側面もあり、次のような課題が生じやすくなります。
- 仕様変更が多く混乱を招く恐れがある
- 納期が遅れるリスクがある
- 原価状況の把握が難しい
- 最適なQCDを維持しにくい
仕様変更が多く混乱を招く恐れがある
個別受注生産は、受注時点では仕様が確定しておらず、設計・製造を進める中で、仕様変更を繰り返すことが一般的です。すると、図面の修正や部品の再手配、製品の不具合による作業変更などが必要になる場面が多く見られます。
これにより、製造現場で混乱が生じる可能性が高まります。
さらに、他の生産形態や生産方式の製造ラインを併用しているケースでは、企業全体に影響が及ぶ可能性も考慮しておくべきでしょう。
納期が遅れるリスクがある
製品の設計段階からはじめる個別受注生産では、仕様の決定から部品を手配するまでのリードタイムが長くなり、納期までに時間がかかります。
また、途中で仕様の変更があると、修正する時間・人員・設備の再調整が必要となります。
結果として生産が間に合わず、納期が遅れるリスクが高まります。
原価状況の把握が難しい
個別受注生産では度重なる仕様変更や工程の煩雑化が起こりやすく、原価状況を把握しにくいこともデメリットの一つです。
原価状況を把握できなければ、原価高騰に迅速に対応することができません。
原価が予想以上に高くなった場合、対処が遅れ、気づいたときには赤字になっていた、というケースも起こりうるでしょう。
最適なQCDを維持しにくい
製品ごとに仕様が異なる個別受注生産では、加工内容や工程手順、生産期間、設備、コストなどもそれぞれ異なります。
ニーズに合わせた高品質な製品を目指そうとすると「コストが増加する」「納期が長くなる」、納期に間に合わせようとすると「品質が損なわれる」など、最適なQCD(品質・コスト・納期)の維持が難しくなりがちです。
既存の生産管理システムによる生産管理も課題の一つ
製造業において生産に関わる業務を一元管理できる生産管理システムは、本来であれば生産性向上に役立ちます。しかし、「見込生産用に作られたシステムで個別受注生産に対応しようとして苦慮する」など、既存システムでは個別受注生産に対応しきれないケースもあるのが実情です。
見込み生産と併用するためには、煩雑化した工程などの管理に対応できるような柔軟性や機能のある生産管理システムが求められます。
このように、既存の生産管理システムでは個別受注生産の特性に対応しきれず、かえって現場負荷を高めてしまうケースも少なくありません。
個別受注生産の課題を解決する対応方法
個別受注生産のデメリットを解消するためには、以下のような対策を講じることが重要です。
- 標準化できる部分を見極める
- 工程管理表の作成で進捗の見える化を図る
- 情報の一元管理をする
個別受注生産では、顧客の要望に沿った製品を「品質よく」「納期を守り」「利益が確保できる原価で製造し、納品する」ことが求められます。
標準化できる部分を見極める
個別受注生産では、標準化できる部分を見極めることが重要です。
前述の通り、個別受注生産では顧客のニーズが優先されるため、納期や生産性が犠牲になりがちです。これらの課題に対しては、顧客の要望を的確に捉え、標準化が可能な部分と個別に対応するべき部分を見極める必要があります。
たとえば、標準化できる部分はBOM(部品表)として整理し、BOMに基づいて手配・製造を行います。
工程管理表の作成で進捗の見える化を図る
工程管理表を活用した進捗状況の「見える化」は、「納期遅れ」や「現場の混乱」といった課題の解決につながります。
また製造現場では、複数案件の製造が同時進行していることが一般的です。そのため、一つの案件の工程が変更になると、他の案件にも影響をおよぼします。
情報の一元管理をする
仕様変更が多く、工程管理や生産計画が複雑化しやすい個別受注生産において適切なQCDを維持するには、「設計」「仕様」「部品」「原価」などの最新状況を一元管理することも重要です。
個別受注生産に適した生産管理システムなら全ての解決策を網羅
前述の課題解決策をすべて実施するには、生産管理システムの導入が有効です。
生産管理システムを導入する際は、「受注生産や見込生産など複数の生産形態に対応しているハイブリット型のシステムの選択が必要」という注意点もあります。
個別受注生産の課題解決のための生産管理システムには、柔軟性や多岐にわたる機能が求められるためです。
すでに自社で扱っている生産管理システムが単一の生産形態にしか対応できない場合、新しいシステムに刷新する方が長期的には功を奏することもあります。
生産管理システム「ProAxis」なら個別受注生産の管理がしやすい

個別受注生産では、仕様変更・進捗・原価が絡み合うため、“製番単位で追えること”と“情報の一元管理”が重要になります。こうした要件を満たす選択肢の一つが、生産管理システム『ProAxis』です。
現場ニーズを重視した「ProAxis」は、「適応性」「操作性」「柔軟性」を考慮した生産管理システムです。
- ハイブリッド生産管理に対応
-
製番BOM運用による個別受注生産の「多品種少量生産」と、受注生産または見込み生産の「量産」の両方に対応可能です。
- 生産性向上をサポート
-
「原価管理」「工程管理機能」「生産計画」などの機能を備えており、仕様変更が多く管理が煩雑化しやすい個別受注生産でも、情報を一元化し生産性の向上が見込めます。
- 生産管理業務全体の状況をリアルタイムに把握可能
-
仕様の変更やトラブルに迅速に対応できる環境を構築可能です。
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個別受注生産の課題を知り、最適化を図ろう
個別受注生産は、顧客ごとの要望に柔軟に対応できる一方で、仕様変更の頻発や進捗・原価の見えにくさなど、現場負荷が高まりやすい生産方式です。特に、納期遅れや原価悪化といった問題は、管理の仕組みが追いついていないことが原因で起こるケースも少なくありません。
一方で、仕様変更による「現場の混乱を招く」「納期遅れ」「原価状況が把握できない」「QCDバランスが崩れる」といった課題が生じることもあるでしょう。
こうした課題に対応するためには、すべてを属人的に対応するのではなく、標準化できる部分を見極めること、工程や進捗を見える化すること、設計・仕様・原価などの情報を一元管理することが重要です。個別受注生産であっても、管理の考え方や仕組みを整えることで、QCD(品質・コスト・納期)の最適化は十分に可能です。
個別受注生産の特性を正しく理解し、自社の生産方式に合った管理体制やシステムを見直すことが、安定したものづくりと利益確保につながります。現場の混乱や非効率を「仕方ない」とあきらめる前に、改善できるポイントがないかを改めて整理してみてはいかがでしょうか。
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